ラン科植物に発生する害虫は、 アブラムシ、カイガラムシ、ダニ、スリップス、ナメクジ・カタツムリ、ガの幼虫、ゾウムシなどがあります。 アブラムシ 代表的な吸汁性の害虫で、きわめて種類が多い。 対策 栽培施設の周囲にあるアブラムシの発生しやすい植物を遠ざけるか、防除を徹底する。 アリがアブラムシを運んだり天敵を排除することがあるので、植物体にアリが寄らないようにする。 温室の側窓などを通風のために開放する場合は、できるだけナイロンやメッシュなどを張って進入を防ぐ。 アブラムシが黄色に誘引される性質を利用して、黄色い粘着テープや石鹸水を入れた黄色い皿をベンチの上の数箇所に配置し、密度を下げる工夫をする。 アブラムシが反射光線を嫌う性質を利用して、市販品のシルバーポリフィルムやアルミホイルをベンチ上の数箇所に敷いたり、植物間にアルミホイルを吊るして、密度を上げる工夫をする。 カイガラムシ 分類的にはアブラムシと同じ吸汁性昆虫の一種であるが、最も形態が特殊化した一群で極めて種類が多く、形、色、大きさなど様々である。 対策 バルブの薄皮や古葉はこまめに除去する。 小型のカイガラムシが多数寄生すると斑点病のように見えることがあるので、拡大鏡などをつかってよく観察する。 外部から持ち込んだ株に付着して温室内に侵入することがほとんどなので、新規導入株は十分に観察し、完全に防除する。 発見次第捕殺するか、こすり落とすが、このときにブラシなどを使うと植物体表面に芽に見えない細かい傷がつき、ウイルス病や他の病害の感染の原因になるので、やわらかい布やガーゼを私用するのが良いでしょう。 ダニ類 対策 温室の側窓などを通風のために開放する場合、風の入る側にナイロンメッシュなどを張る。 ハダニ類の密度を下げるために高温期にはこまめに葉水をかける。 コナダニ類の密度を下げるために、ランの生育に影響が無い範囲で温度を低くして乾燥させる。 コナダニ類のエサとなる未分解の有機物や稲わらを温室内で使用したりしない。ナタネ粕などの有機質肥料はできるだけ他のものに代替し、使用しなければならない場合は、十分に発酵したものを使用する。 ナメクジ・カタツムリ類 対策 温室内や周囲の雑草や落葉などを完全に除去する。 温室周囲やベンチの下に資材や鉢を置かない。 鉢底の穴は防虫対策で必ずふさぐ。 通風と採光に心がけ、屋外管理する場合は雨よけの下に置く。 カタツムリ類が多発する場合には、温室の周囲やベンチ下に石灰を散布したり、床に石灰を塗ったりする。 ナメクジ類が銅を嫌う性質を利用して、硫酸銅水溶液をしみこませた新聞紙をベンチの下に置いたり、高濃度の銅殺菌剤をベンチの支柱や下面に吹き付ける。 市販のナメクジ罪は降雨や灌水によって安定した効果が期待できなくなるので、使用するタイミングなどに注意する。 ガの幼虫 対策 必要の無い灯火を点灯しない。また電照をする場合は、側窓や天窓を閉めるかナイロンなどを張って、温室内に侵入する個体数を減らす。 ヨトウガの成虫は糖蜜に誘引されるので、この性質を利用した捕殺容器を作り、数箇所に配置して、密度を下げる。 殺虫剤に頼らず、見つけ次第に捕殺する。 殺虫剤の散布は幼虫の若齢期をねらって集中的に行う。 近年、殺虫剤に対する抵抗性を生じた種類が見られるため、殺虫剤の選択と使用回数に注意する。 【参考文献】 園芸ハンドブック「ラン」 山下弘一著、ミニ洋ラン 新井清彦著、洋ランつくりのコツのコツ 岡田弘著、洋ランの病害虫除去 福田輝明著